局所麻酔の歴史について
美容外科に限らず麻酔薬はどの分野の医療においても患者さんの苦痛を軽減するものとしてとても大切です。
今日はそんな局所麻酔薬の歴史についてです。
局所麻酔の起源はコカインだった!
なんと、局所麻酔の歴史はあのコカインからなんですね~!
私も大学の時に麻酔科学を勉強しててびっくりしました。
人類恐るべし。
1544年、Bernabe Codeが歯の痛みの軽減のために植物のコカを噛んだ記述があります。(ミラー麻酔科学2007)
元々コカ(Erythroxyloncoca )はアンデス山脈アマゾン側のユンガス地方を原産とする植物であり,
そのコカの使用の歴史に関しては ,スペインのインカ征服(1531 〜36 年)直後に書かれた「ペルー年代記」(ペドロ ・レオン著 ,1553 年)と「インカ皇統記」(ガルシラーソ ・ベーガ著 、1609 年)に詳しく記されています。
インカ帝国の人々が3000メ ートルを越す高地に高い文明を築いていたことは有名です。
今でもピラミッドに匹敵するほどの巨大な建造物や煌びやかな黄金製品,色彩豊かな織物が文化遺産として現存しています。
しかし,なぜ3000メートル級の高知でこれほどまでに文明が栄えたのでしょう?
3000メートル級の高地での活動は本来人類には過酷であり,低酸素症よる活動制限など様々な不都合も多々起こります。
インカの人々はコカの葉を噛むことで何日も急斜面を食物も水も摂らずに荷物を運び ,疲労を癒し,忍耐力を強化したとされています。
高地での過酷な労働条件コカの葉で克服できるという知恵を見出し,その力を伝承していたようです。
実際、大量のコカがインカの奴隷を元気づけるのにも使われスペインによる征服は「黄金をコカで搾り取った」と言われています。
当時からすでに覚醒剤としてのコカの効能が見出されていたことになりますね。
その後、1879年にVassily von Anrepが自らの腕にコカインを注入し痛みがなくなることを発見し
1884年にCarl Kollerにより白内障の手術をコカイン点眼にて無痛で手術できたとされています。
この時Koller先生、若干20歳です!
局所麻酔薬の作用機構
局所麻酔薬の作用機構については痛覚神経の細胞内に分子型(塩基の形)として入り,神経細胞内でイオン型になり,神経細胞の内側から作用してナトリウムの流入を阻害し,神経の興奮(脱分極)をブロックすることで麻酔作用をもたらします。
新しい局所麻酔薬の開発
コカインは局所麻酔薬として素晴らしい薬効を持っていましたが ,ご存知の通り量を過ごすと危険な薬物です。
その後の地道な研究の末,基本骨格とするプロカインと命名された局所麻酔剤が開発され ,現在も広く用いられています 。
その後リドカイン、ジブカイン、オキセサゼエインなど多くの優れた局所麻酔薬が開発されました。
化合物名製品名を問わず局所麻酔薬には「カイン」という語尾が付いていることが多いようでね。
おわりに
局所麻酔薬が覚醒剤の乱用で問題になるコカインから開発された薬であることを知っている人は少ないと思わ れ今回ブログに書きました。
今回、取り上げたコカインに覚醒作用があることを述べましたが ,ご存知の通り法律上コカインは覚せい剤取法の対象ではなく,麻薬として取り扱われます。
コカインと同じ薬理作用を持つ化合物は簡単に合成できそうですが許可なく合成したら麻薬取締法で罰せられます。
絶対だめ!
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