性同一性障害(GID)の診断(MTF・FTM)静岡GID学会を経て


先日GID静岡主催のフォーラムに参加しました。

テーマは「性同一性障害治療の最前線」で、性同一性障害(GID)治療の第一人者である精神科医の針間医師による講演でした。

内容は、性同一性障害(GID)の概念と現状、アメリカ精神医学会やWHOによる最新の診断基準、そして戸籍変更を行う人の推移など盛りだくさんな内容でした。

今回は針間医師の再診の講義内容を含め、性同一性障害(GID)の治療(診断)について説明していきます。

性同一性障害(GID)に関する法律と治療のガイドラインの成立

日本では性同一性障害当事者が抱える社会生活上のさまざまな問題を解消するため、2003年7月に「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」(特例法)が成立しました。それにより現在国内では戸籍変更が可能になりました。

また、日本精神神経学会は昭和40年の「ブルーボーイ事件」を契機に、性別適合手術における「闇の時代」を打ち破るため「性同一性障害の診断と治療のガイドライン」を公表しました。このガイドラインにおいては,性同一性障害は医療の対象とされ,性別適合手術(sex reassignment surgery: SRS)は,性同一性障害の治療として正当な医療行為であると位置づけられ、現在は第4版まで改定されています。

性同一性障害(GID)FTM・MTFの戸籍変更の必要条件

家庭裁判所は、性同一性障害者であって以下の1から6までの要件のいずれにも該当する者について,性別変更の審判を行っています。

1、2人以上の医師により性同一性障害であることが診断されていること

2、20歳以上であること

3、現に婚姻をしていないこと

4、現に未成年の子がいないこと

5、生殖腺(内性器:MTFの場合は精巣、 FTMの場合は卵巣、外性器:MTFの場合は陰茎・陰嚢、FTMの場合は大陰唇・小陰唇・陰裂)がないこと、または、生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること

6、ほかの性別の性器の部分に近似する外観を備えていること

性同一性障害当事者すべてが戸籍変更をしたいと考えているとは限りません。それぞれ自己決定のもと最終的に戸籍変更を望む場合、上記6つの要件をすべて満たしている必要性があります。

ちなみに国内において性同一性障害当事者(FTM・MTF)の戸籍変更が認められた数は2004年から上昇しており、2014年には年間変更者数が800人を超え、2015年までに延べ6000人以上となっています。

今回は上記要件の1にある「性同一性障害(GID)の診断」について説明します。

精神科受診から診断まで

性同一性障害(GID)と正式に診断されるためには精神科を受診する必要性があります。

施設により異なりますが、精神科を受診すると以下の手順に沿って性同一性障害についての診断を行っていきます。

①ジェンダー・アイデンティティの判定

②身体的性別の判定

③除外診断

この過程を経て、身体的性別と性の自己認識が一致しないことが明らかになれば、性同一性障害と診断されます。

以下に①から③について説明します。

①ジェンダーアイデンティティー(Gender Identity)の判定とは

 

ジェンダーアイデンティティー(Gender Identity)とは自分自身が自覚・認識している性別で、心の性とも言われます。

多くの人は意識することもなく「自分は男であり、男として生活することが当然」「私は女であり、女として生活することが当然」と感じます。そのため男として・女としての振る舞いや立場を当然の様に取りながら日常生活を送ります。

この様に自身の性別を男・女であると感じたり、男・女であることを認めることを「性自認」と呼びます。

しかし性同一性障害当事者は、生物学的性と性自認が異なります。よってジェンダーアイデンティティーを正確にとらえることが性同一性障害の診断に必要となります。

精神科では医師やカウンセラーによるカウンセリングが複数回行われ、必要な情報が得られるまで続けられます。検討の期間は定められていません。

ジェンダーアイデンティティーを検討するための要素は以下の通りです。

詳細な養育歴・生活史・性行動歴

医師およびカウンセラーによるカウンセリングにより聴取されます。

当事者の同意を得られた場合、親族や親しい関係にある人たちから症状の経過・生活の様子・人格・家族関係を聴取する場合もあります。

そのうえで総合的にいずれの性別で生活することが当事者にとってふさわしいのかを検討していきます。

性別違和の実態

これも医師およびカウンセラーによるカウンセリングにより聴取されます。

性別違和(Gender Dysphoria)とは身体的性別と心の性に不一致・違和感を覚えることです。

従来このような感覚をもつ人々は性同一性障害をもつ者であると呼んでいましたが、近年は「障害」ととらえることへの反発や研究が進み「性別違和」という言葉が使われるようになってきました。

具体的には、以下の内容です。

①自らの性別に対する不快感・嫌悪感

第一次、第二次性徴から解放されたいと考える。自分が間違えた性別に生まれたと確信している。乳房や陰茎・睾丸を傷つける行為があるなどがあります。

②強く持続的な反対の性別に対する同一感

反対の性別になりたいという願望があり、反対の性別の服装や言動を認める。治療(ホルモン療法・手術療法)により身体的特徴を反対の性別に近づけたいという願望を持っているなどがあります。

③反対の性役割を求める

日常生活で反対の性別として行動する、または行動しようとする。しぐさや身のこなし・言葉づかいなどにも反対の性役割を望み、そのように行動するなどがあります。

②身体的性別の判定とは

身体的性別の判定は泌尿器科および婦人科の医師が診察を行います。

MTF(Man To Female)の場合は精巣・陰茎・陰嚢、FTM(Female To Man)の場合は卵巣・陰唇・陰裂の診察が行われ、生物学的性別における内・外性器の異常の有無を把握します。また、男性ホルモン・女性ホルモン値の測定を行います。

上記のことを総合的に判断し生物学的性別の異常の有無を判定します。

③除外診断とは

精神障害(統合失調症、うつ病、発達障害)で性同一性障害に似た症状が現れる場合があります。

統合失調症による妄想や幻聴により性別違和を訴えたり、アイデンティティーの混乱の一つとしてジェンダーアイデンティティーも混乱をきたすのです。

つまり性別違和を訴える場合、精神障害を否定することが必要になります。

また、なんらかの理由で本来の性役割を避けるため、職業利益を得るためではないことを確認します。

 性同一性障害(GID)診断の確定

上記の要素を総合的にとらえ、生物学的性別とジェンダーアイデンティティーが一致しないことが明確であれば初めて性同一性障害(GID)と診断されます。

性同一性障害(GID)の診断は十分な理解と経験をもつ精神科医が診断にあたることが望ましい、そして確定のために2人の精神科医の意見の一致が必要とされています。

これは性同一性障害(GID)治療はホルモン療法や手術療法など不可逆的治療であるため、診断が確実であることが前提とされるためです。

 国内の性同一性障害(GID)を扱う病院・クリニック

GID MEDIAという団体のホームページに国内で性同一性障害(GID)を扱う病院・クリニックの掲載がありましたので是非参考にしてください。

まとめ

性同一性障害(GID)と正式に診断されるためには精神科の受診が必要である。

診断は「ジェンダーアイデンティティーの判定」「身体的性別の判定」「除外診断」に関するカウンセリング・診察が行われ、精神科医の総合的な判断により確定される。

今回は性同一性障害(GID)の診断についてお伝えしました。

当クリニックではGID当事者が自分らしく前向きに生きていくことを応援していきます。

些細なことでもお気軽に相談してください。

 

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