LGBT(性的少数者)を取り巻く環境と当事者の悩み 静岡 橋本クリニック

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皆さま、ゲイ・プライドという言葉を聞いたことがありますか?

ゲイ・プライドとはレズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダーが自己の性的指向や性自認に誇りを持つべきとする概念です。

そして6月も残りわずかですが、今月は「プラウド月間」といってLGBT(lesbian・gay・bisexual・transgenderの英語表記の頭文字をとった略称)の権利について啓発を促すさまざまなイベントが世界中で開催されています。

そこで今回は性同一性障害(GID)が属するLGBTという概念について理解し、当事者の抱える問題を考えてみいきます。

LGBT(性的少数者)とは

最近よく耳にするLGBT(性的少数者)という言葉。
LGBTという言葉や概念については多様な意見があります。
始まりは、2006年7月にカナダのモントリオールでレズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダーの人権に関する国際会議が開催されました。そこでLGBTの人権確保を求めて成立したのがモントリオール宣言です。
その後、国連をはじめとした国際機関において、性的指向や性自認に関連する人権問題を取り扱う公文書でもLGBTという言葉が使用されるようになりました。
「LGBT(性的少数者)」とは、女性同性愛のレズビアン(lesbian)、男性同性愛のゲイ(gay)、両性愛のバイセクシュアル(bisexual)、性同一性障害を含む肉体と精神の性別が一致しないトランスジェンダー(transgender)の人々の総称で、それぞれの英語表記の頭文字を組み合わせLGBTと表現しています。
性同一性障害者(GID)はTのトランスジェンダーに分類され、生物学的性は女性で男性の心を持つ人をFTM(Female to Man)、生物学的性は男性で女性の心を持つ人をMTF(Man to Female)と言います。

LGBT(性的少数者)の割合

日本におけるLGBTの割合はどれくらいでしょうか。
2015年に電通ダイバーシティ―ラボが全国約7万人に性的少数者=セクシュアル・マイノリティに関する調査を実施しています。その結果LGBTに該当する人が7.6%(13人に1人)いることがわかりました。そのうちトランスジェンダーは14%でした。ちなみに2012年実施の調査では5.2%(19人に1人)でした。
それでは海外はどうでしょう。
各国が独自の調査をしているため単純に比較するのは難しいですが、だいたいどの国でも20人~30人に一人が「同性に性的な魅力を感じたことがある」と回答するという結果になるようです。
割合は世界全体で約3%~4.5%で、LGBTに寛容な印象のあるアメリカでは約3.5%と日本より低いのが実情です。

LGBT(性的少数者)の認知度

日本におけるLGBTの認知度はどれくらいなのでしょうか。

LGBT MARKETING LABが2016年に全国332人の男女に行ったLGBT認知度調査がありあます。それによりますと、対象の約50%がLGBTを知っている、または、聞いたことがあるという結果に至ったとしています。

そして知ったきっかけの50%はメディアからの情報であると発表してます。

行政では、2003年7月「性同一性障害の性別の取り扱いの特例に関する法律」(特例法)が成立し2004年7月から施行されました。この法律によって、性同一性障害者は、性別適合手術の実施を含む一定の条件のもとで戸籍の性別変更ができるようになりました。

また、東京都渋谷区・世田谷区では同性カップルを「結婚に相当する関係」と認めるためのパートナーシップ条例を成立し、現在では兵庫県宝塚市・三重県伊賀市・沖縄県那覇市と広がりを見せ、北海道札幌市でも2017年に予定しています。

その他、メディアの影響やLGBT支援団体の活動により、LGBTの認知度が今後も上昇することが予測されます。

それでは、LGBT当事者たちはこうした動きをどのように受け止め、どのような環境で社会生活を送っているのでしょうか

LGBT(性的少数者)の切実な声

LGBT当事者を巡る社会的な動きが進む中、当事者達の受け止め方はどうなのでしょうか。

NHK ONLINEによるLGBT当事者アンケート調査があります。

調査よるとLGBT当事者たちは周囲の偏見や差別を恐れ、家族へのカミングアウトさえもできないという厳しい状況の中で生きているという状況がみえてきます。

以下に当事者が抱える悩みをいくつかのカテゴリーに分類しまとめてみました。

LGBTのカミングアウトの壁

自分が性的マイノリティであることを家族など周囲の人に伝えることを「カミングアウト」と言います。これは当事者が周囲から理解や支援を得るために重要ですが、大きな課題になってるのです。

当事者の悩み

〇親へカミングアウトしたが全否定をされた。

〇地方では性的少数者やそのコミュニティーは色眼鏡で見られている。

〇触れてはいけないもの扱いをされる。

〇メディアに登場するゲイやレズビアンを否定している家族や友達の姿を見るのがつらい。

〇カミングアウトすることもしないこともストレス。

〇職場でカミングアウトしたら差別され仕事を辞めることになった。

〇LGBTであることをカミングアウトした友人の大半が自分のもとを離れていく。

LGBTのストレスによる健康障害

性同一性障害(GID)、身近な人になかなか打ち明けられない、という苦しみなどのストレスから健康障害をきたす場合もあります。

当事者の悩み

〇ストレスによる脱毛になった。

〇睡眠障害になった。

〇差別や偏見が不安でうつ状態になった。

LGBTの仕事や住居

 

様々なストレスを抱えて生活するLGBTの人たちは、仕事や住環境にも課題を抱えています。

当事者の悩み

〇性的マイノリティであることを理由に採用試験で不合格になった。

〇性的マイノリティーで女性だと低所得で生活が厳しい。

〇物件探しで男2人というだけで門前払いされて苦労した。

LGBTのパートナーシップと結婚と子供

LGBT当事者は「社会的弱者」になりがちです。2015年東京都渋谷区、世田谷区でパートナーシップ条例が始まり広がりを見せていますが、それでも悩みを抱えています。

当事者の悩み

〇ゲイとして生まれたので無理して女性と結婚しても幸せになれない。さらに寂しくなる。

〇老後に向けてパートナーとの社会的関係をどうするか(養子縁組するかなど)で悩んでいる。

〇異性愛者のように、皆に祝福されて幸せな人生を歩みたい。

〇愛する人と安心して幸せに暮らす権利が誰にもあるはず。

LGBTの多様な生き方を認めてくれない社会

人間は家族や友人など、周囲の人々との関わりや信頼関係、支え合いを大切にしながら生きています。当たり前のことの様ですが、LGBTの当事者にとっては非常に難しいのです。

当事者の悩み

〇履歴書や証明書から性別欄をなくして欲しい。

〇「オカマ」「キモい」「まだ結婚しないの」「早く子ども産みなさい」などの言葉に傷つく。

〇特別な扱いを求めているわけではなく、LGBTでない人と同様な幸せがほしい。

〇同性愛を気持ち悪いと思う人が大半だと思うが、自分たちではどうすることもできない。

〇なんの罪もなく産まれ、性別の不一致に苦しみ、世間に対し自分を偽って生きてきた。

〇偏見なく暮らしていける世の中になって欲しい。

〇日本の社会は「同じであること」に意味を見いだしすぎ。

〇多様な生き方や家族のありかたに寛容に なって欲しい。

〇堂々と自分のことを語れるようになりたい。

LGBTのまとめ

日本のLGBT人口は約951万5千人(13人に1人)いるとされており、世界の割合からみても高い状態です。

認知度が約50%あり、国内でもLGBT当事者たちの人権を認めるための体制が整えらるる中、周囲の偏見や差別を恐れ、家族へのカミングアウトさえもできないという厳しい状況の中で生活していることが実情です。

今回はLGBTの方々が抱える悩みを考えてみました。

当クリニックでは当事者が自分らしく前向きに生きていくことを応援していきます。

些細なことでもお気軽に相談してください。

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