ピコレーザー(エンライトン):タトゥー(入れ墨)除去の治療回数
タトゥー除去を考えたとき、まず最初にレーザーによる治療を考える人が多いのではないでしょうか。
少し時間がかかっても、傷を残さず綺麗に消すことができる可能性のあるレーザーにメリットを感じているのだと思います。
最近では、従来のレーザー治療(Qスイッチ・アレキサンドライト)の「時間がかかる」という問題を解決する方法としてピコレーザーという種類のレーザーが注目されています。
そこで今回は「The Kirby-Desai Scale: A Proposed Scale to Assess Tattoo-removal Treatments」:clinical aethetic:march/2009/vol.9/no.3という論文から、レーザー治療によるタトゥー除去に必要な治療回数を決定するためのスケールを紹介いたします。
このKirby-Desaiスケールは2009年に発表され、算出された合計がQスイッチ・アレキサンドライトレーザーを用いた場合のタトゥー除去の回数の目安になります。
ピコレーザーはQスイッチ・アレキサンドライトレーザーの半分の回数が目安と言われています。
なお、ピコレーザーに関しては以前「ピコレーザー(エンライトン)を用いたタトゥー(入れ墨)・シミ除去について」で紹介いたしましたので参考にしてください。
レーザーによるタトゥー(入れ墨)除去に必要な回数の評価
タトゥーは「レーザー治療なら簡単に消せる」「レーザーなら傷跡を残さない」と思っている方たくさんいます。
しかし実際は、「〇〇回レーザー治療を行えばタトゥーが消える」と言い切るのが難しいのが現実でした。
この論文では、Kirby-Desaiスケールにより利用者の肌・タトゥーの位置・色・インク量・瘢痕・タトゥーの層を数値化することにより、治療回数の目安をつけるためのツールが紹介されています。
Kirby-Desaiスケールを用いて医師はレーザー治療計画をより正確に立てることができ、また、利用者も治療回数の目安を知ることができます。
Kirby-Desaiスケール
Kirby-Desaiスケールでは6つの要素から数値化されるスコアにより、治療回数の目安がわかります。
この論文は2009年に発表されたものでQスイッチ・アレキサンドライトレーザーを用いた場合のタトゥー除去の回数の目安になります。
ピコレーザー(エンライトン)によるタトゥー除去は、Qスイッチ・アレキサンドライトレーザーの約半分の回数で治療が済みます。
①スキンタイプ
色素沈着の程度や紫外線への反応に基づいて皮膚のタイプをⅠ~Ⅵに分類し数値化します。
Ⅰ.火傷になり、常に日焼けしない →1ポイント
Ⅱ.時々火傷になり、あまり日焼けしない →2ポイント
Ⅲ.軽度の火傷になり、徐々に日焼けする →3ポイント
Ⅳ.まれに火傷になり、容易に日焼けする →4ポイント
Ⅴ.ほとんど火傷にならず、簡単に日焼けする →5ポイント
Ⅵ.火傷にならず、日焼けする →6ポイント
②部位
身体各所への血液・リンパの供給は部位により異なります。
タトゥーの色素顆粒は、レーザー照射により結合が破壊され小さな分子になることにより、マクロファージにより貧食されて退色していきます。
そのため血液・リンパ循環が良好な部位はタトゥーの色素顆粒の吸収が良いとされています。
Ⅰ.頭部・顔面・頸部 →1ポイント
Ⅱ.肩・上半身・上腕 →2ポイント
Ⅲ.下腹部・腰部・大腿 →3ポイント
Ⅳ.前腕・下腿 →4ポイント
Ⅴ.手・足 →5ポイント
③色調
タトゥー施術者が最も頻用する色素は黒、赤、青、緑、黄、オレンジです。
レーザー治療では黒、ついで、赤の色素を除去することは比較的容易です。
Ⅰ.黒のみ →1ポイント
Ⅱ.ほぼ黒で赤混在 →2ポイント
Ⅲ.ほぼ黒と赤で他の色が混在 →3ポイント
Ⅳ.マルチカラー →4ポイント
④インクの量
インクの量の違いは、タトゥーの施術者により(専門家かアマチュアか・手彫りか機械彫りか)にあります。
アマチュアや機械による場合、色素は表皮・真皮に不均衡に入れられ、専門家よりもインクが少ない傾向にあり、レーザー治療へ素早く反応します。
Ⅰ.少ない(文字や単語) →1ポイント
Ⅱ.普通(単純なデザイン) →2ポイント
Ⅲ.やや多い(複雑なデザイン・単色) →3ポイント
Ⅳ.多い(複雑なデザイン・マルチカラー) →4ポイント
⑤瘢痕
タトゥーを入れたことにより皮膚に瘢痕が生じる場合があります。
瘢痕の状態により治療効果に影響がでます。
Ⅰ.瘢痕形成なし →0ポイント
Ⅱ.わずかに瘢痕形成 →1ポイント
Ⅲ.中等度の瘢痕形成 →3ポイント
Ⅳ.重度の瘢痕形成 →5ポイント
⑥重なり
古いタトゥーの上に「気に入らない」「新しいデザインにしたい」など様々な理由で新しいタトゥーを重ねて入れる場合があります。
この様な場合、古いものを効果的に隠すため新しいタトゥーは古いものよりも大きく、濃い色調になりがちです。
それはレーザー治療の効果にも影響が出ます。
Ⅰ.重なりなし →0ポイント
Ⅱ.重なりあり →2ポイント
Kirby-DesaiスケールとQスイッチ・アレキサンドライトレーザーによる治療回数
上記のグラフはKirby‐Desaiスケールを用いて数値化されたスコア(縦軸)と、従来タトゥー除去の主流であったQスイッチ・アレキサンドライトレーザーによる治療回数(横軸)の関係を表しています。
スコアが低いと治療回数は少なく、高くなるにつれて治療に時間がかかってることがわかります。
Kirby‐Desaiスケールでは総合スコアの点数が治療回数の目安としてとらえられます。
ピコレーザー(エンライトン)でのタトゥー(入れ墨)除去の治療回数
従来のQスイッチレーザーではタトゥー消失まで時間や回数がかかりました。
ピコレーザーは、パルス幅が「ナノ秒」より更に短い、「ピコ秒」であり、これにより、より短期間で確実にタトゥーを除去することができるレーザーです。
ピコレーザーによるタトゥー治療に要する期間は、Qスイッチレーザーの約半分で済みます。
例1タトゥー:ワンポイント・レター
①スキンタイプ
上記のスキンタイプを日本人に多いⅢ →3ポイント
②部位
部位がⅡ.肩・上半身・上腕 →2ポイント
③色調
Ⅰ.黒のみ →1ポイント
④インクの量
Ⅰ.少ない(文字や単語) →1ポイント
⑤瘢痕化
Ⅰ.瘢痕形成なし →0ポイント
⑥重なり
Ⅰ.重なりなし →0ポイント
合計7ポイント
部位・インクの量・色調からスコアが低いタトゥーは治療回数が少なくすみます。
Qスイッチ・アレキサンドライトレーザーだと7回が目安です。
ピコレーザー治療ですと3回~4回が目安です。
例2タトゥー:和彫り
①スキンタイプ
上記のスキンタイプを日本人に多いⅢ →3ポイント
②部位
部位がⅡ.肩・上半身・上腕 →2ポイント
③色調
Ⅰ.黒のみ →1ポイント
④インクの量
Ⅲ.やや多い(単色) →3ポイント
⑤瘢痕化
Ⅰ.瘢痕形成なし →0ポイント
⑥重なり
Ⅱ.重なりあり →2ポイント
合計11ポイント
部位・色調のスコアは低いですが、インク量が多い・重ね入れしている場合、総合スコアは高くなります。
Qスイッチ・アレキサンドライトレーザーだと11回が目安です。
ピコレーザー治療は5~6回が目安です。
例3タトゥー:カラー
①スキンタイプ
上記のスキンタイプを日本人に多いⅢ →3ポイント
②部位
部位がⅡ.肩・上半身・上腕 →2ポイント
③色調
Ⅳ.マルチカラー →4ポイント
④インクの量
Ⅳ.多い(マルチカラー) →4ポイント
⑤瘢痕化
Ⅰ.瘢痕形成なし →0ポイント
⑥重なり
Ⅱ.重なりあり →2ポイント
合計15ポイント
ピコレーザーは黄色・オレンジ・緑・赤などカラータトゥーにも反応が良好です。
色調がマルチカラーでインク量が多いと総合スコアはさらに高くなります。
Qスイッチ・アレキサンドライトレーザーだと15回が目安です。
ピコレーザー治療は7~8回が目安です。
まとめ
Kirby-Desaiスケールにより、レーザーでのタトゥー除去の大まかな治療回数の目安がわかるようになりました。
Kirby-Desaiスケールの合計の1/2がピコレーザーでの治療回数の目安です。
参考にしていただけたら幸いです。
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