顔面のたるみの原因とその治療(リフトアップ治療) 静岡橋本クリニック
当院に来院される方の半数は50歳以上の女性です。
シミ、しわ、たるみなどの改善を主としたアンチエイジング治療を皆様こぞって施術希望されます。
最近、読んだ「未来の年表」河合雅司著でも少子高齢化が進み今後もますますアンチエイジング治療が盛んになると予想出来ました。
ちなみにこの本は少子高齢化の来る日本の甘くない現実が書かれており日本の将来を本気で不安にさせる本でした。
以前、たるみが気になったら(美容外科に来る前編)を書きましたが今回は美容外科に行ったら出来ること編です。
加齢による顔面の変化
たるみは皮膚だけでなく、皮下脂肪、筋肉、骨などを含めた全層に渡って加齢性変化を生じます。
1、皮膚層の加齢変化
加齢変化として皮膚自体は菲薄化しコラーゲンの減少と共に弾力性を失うとともにその表面積は大きくなります。
2、筋肉層の加齢変化
顔の筋肉は非常に薄い筋です。生まれた時はSMASと一体化して分離していないが成長とともに表情筋が形成され筋肉量、筋力ともに30代をピークに下降します。
この筋肉量・筋力の低下がたるみの原因となります。
巷でよく聞く表情筋の筋トレですが、元々顔面の筋肉は非常に薄いのでトレーニングによって筋肉隆々は無理ですが、表情筋を動かすという事はとても重要です。
顔面の筋肉の種類と深さ
顔面の筋肉(表情筋)は浅層筋群と深層筋群に分かれます。
浅層筋群は顔面神経より浅い層。
深層筋群は顔面神経より深い層です。
参考文献
第17回臨床解剖研究会記録
顔面の層構造
―表情筋骨格と脂肪コンパートメント―
柏谷 元1 藤村 朗2 小林誠一郎1
1岩手医科大学形成外科学講座 2同大学解剖学講座機能形態学分野
3、脂肪層の加齢変化
顔面の脂肪組織もSMAS(superficial musculo-aponeurotic system)を堺にして浅層脂肪組織、深層脂肪組織に分かれます。
皮膚の下垂に伴いその直下にある浅層脂肪組織も同様に下垂します。
また骨から皮膚に至る構造物すべてを貫く靭帯(ligament)が各所にあり、その靭帯存在部位は下垂した皮膚、浅層脂肪組織が重なってしわとなります。
masseteric ligmament→咬筋皮膚靭帯
mandibular ligament→下顎皮膚靭帯
解剖を知るとしわが出来る位置がわかりますね。
SMAS(スマス)とは
顔面において頭側は、帽状腱膜からおこり各種の表情筋を含みながら、下方は広頸筋にいたる一連の膜様組織をSMAS(スマス)とよびます。
従来から行われているフェイスリフト手術において最も重要な構造物で皮膚のみでなくこのSMASを引き上げることが顔面のたるみを長期改善する重要なファクターとされています。
顔面のしわと名称
・表情筋により表情しわ→→→→→→→→→→→→→
・皮膚及び浅層脂肪組織の下垂が各靭帯が重なって溝になる部位→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
4、顔面骨の老化
顔面骨は、上記のように加齢によって特定の部位に選択的骨吸収がおこります。
・額のくぼみ
・こめかみのくぼみ
・目の周り(上眼瞼や下眼瞼)のくぼみ
・ゴルゴライン
・鼻のかたち(鼻翼もやや横にひろがります)
・あごのラインのくずれ、、、、など。
顔面骨の変形は外観に大きな影響を与えますが、フィラー(ヒアルロン酸など)によってかなり改善できます。
緑の部位がフィラー注入部位です。
以上を踏まえた上で
たるみに対する治療法
たるみ≠皮膚のたるみが解った所で
たるみの治療方法をみて行きましょう!
患者さんのほとんどがレーザー等の機器による治療を希望しますが、基本的に機器治療で変化を生じさせることが出来るのは皮膚表面から5ミリ程度が限界です。
機器による治療の限界はSMASまででしょう。
1、皮膚表皮層のたるみ治療(浅い層)
皮膚層の治療は機器、棘のない糸(リードファインリフト)マイクロボトックスが主役になります。
機器では近赤外線と高周波、糸ではリードファインリフト糸(韓国式美容針)、真皮内ボトックス注射(マイクロボトックス)が挙げられます。
これらは皮膚表面を保護しながら熱作用や異物反応による創傷治癒の原理、腺縮小を用いてskin tightening(お肌の引き締め)を起こしリフトアップ様効果をもたらします。
・棘の無い糸リードファインリフト(韓国式美容針)
局所麻酔後、1回の施術で80~160本使用します。
・真皮内ボトックス注射(マイクロボトックス)
真皮内ボトックス(マイクロボトックス)は2000年頃から東南アジアを中心に広まった手法です。
ボトックスを筋肉内でなく真皮内に細かく少量ずつ注入する方法で、表情筋の動きは温存したまま皮膚表面のテクスチャーの改善やしわの減少を促し、skin tightening効果によるリフトアップを起こします。
ボトックスは濃度と注入量によって拡散範囲が決まっているので通常の筋肉内ではないごく浅い真皮内に膨疹を作るように注入します。
真皮内ボトックス(マイクロボトックス)は下眼瞼外側、額、頬(笑った時にできる縦しわ)、皮脂の分泌を抑制する目的でTゾーンに用いたり、たるみ改善のために中顔面から下顔面、頚部の広範囲に渡って適応されています。
・ピコトーニング・レーザートーニング
ピコトーニング・レーザートーニングとは、機器専用のレーザー照射モードのことです。
非常に弱いパワーでお肌にレーザーを当ててメラニンを少しずつ減らしていくので、従来のレーザー治療では困難だった肝斑の改善に有効なだけでなく、肝斑を含めた色素性の病変を一気に治療できるのです。
顔だけでなく、ボディへのレーザートーニングも効果的です。
ワキの黒ずみや下着のこすれなどの色素沈着改善が期待できるでしょう。
シミだけではない、トータルな美肌効果もあります。
長い波長を持ち合わせているため、皮膚深部(真皮上層)にまでレーザー光線が届き、コラーゲンの生成を促します。
お肌のハリやキメが改善し、毛穴の開き、ほうれい線(口元のシワ)や目元のシワが改善されるというメリットもあります。
そしてリフトアップ効果も得られるので、シミだけでなく全体的な美肌効果が期待できます。
・光治療一般(フォトフェイシャルなど)
光治療=IPL(intense pulse light)は広帯域の波長を出すフラッシュランプです。
レーザーは単一波長であるがゆえにターゲットが限定されます。(ヘモグロビン、メラニンなど)
これに対しIPLが出す光は広帯域であるから幅広い症状に対応しダウンタイムも少ない反面、レーザーと比較して効果が弱いと言われています。
・フラクショナルレーザー
フラクショナルレーザーとは従来面上に照射されていたレーザーを、極小直径のレーザービームを多数照射することによってドットプリンターのように照射する技術です。
照射部位の周辺に正常組織が存在することによって、創傷治癒、上皮化が素早く起こります。
アブレイティブ、ノンアブレイティブのものがあります。
表皮の再生をターゲットとするかで使い分けます。
ニキビ跡→アブレイティブ
しわ、肌の張り→ノンアブレイティブ
2、皮下浅層からSMAS(中間層)のたるみ治療
機器による治療はこの層が限界となり、各種、スレッドリフト、フェイスリフト手術の出番となります。
・高密度焦点式超音波(HIFU)
HIFUは焦点の合う深度のみを非選択的に熱焼する機器です。
真皮や皮下浅層のほかにSMASを標的とした治療が可能になります。
SMASはフェイスリフトの際に引き上げる組織であり、これを非外科的に破壊し収縮させることによってリフトアップ効果をもたらします。
・スレッドリフト
糸を用いたリフトアップのスレッドリフトは手術よりもリスクやダウンタイムが少なく且つ機器よりも肉眼的効果が得やすいのが特徴です。
スレッドリフトには吸収性の糸と非吸収性の糸があります。
吸収性か否か、棘の有無、材質の柔軟性、使用感などを症状、希望に合わせて選択が必要になります。
・フェイスリフト手術
フェイスリフト手術古典的なポピュラー手術で耳の横の縦じわに沿って切開します。
症状や希望に合わせて耳の裏やこめかみまで切開腺を広げます。
機器や糸に比較し傷が残ることやダウンタイムが長い反面、SMASを正確に処置でき皮膚のたるみを物理的に切除できるので確実なリフトアップ効果が望めます。
深部構造(顔面骨を含む)のリフトアップ
深部構造は加齢によって萎縮すligamentの弛緩も伴って顔面形態保持が難しくなります。
特に頬の正面や目の周りの骨の萎縮は目立ちやすくなります。
また頬の側面、側頭部、あごなど様々な部位の容量減少が加齢変化が起こります。
加齢を重ねると女性の顔が男性化するのもこの為です。
また、欧米人は深部組織の萎縮だけでなく皮膚の弛緩が目立ち浅い層で深いしわが生じること事で「老け顔」になりますが、東洋人は皮膚のしわよりも深部構造の萎縮によるたるみが「老け顔」の印象を与えることが多いです。
深部組織萎縮の改善には機器や糸などの作用ではなく、容量を増す手技(フィラー注入)が必須になります。
顔面のたるみ治療のまとめ
顔面の老化変化は上記のように単純ではありません。
単に下垂しただけではなく、組織の萎縮、肌質の変化、柔軟性の欠如、表情筋の変化など多岐にわたります。
そのため、1つの治療ですべての悩みを解決することはできません。
そのため、複合的な治療が必要になります。
しかし、複合的な施術はコストがかかります。
なので私は診察時に総合的評価を行い、十分なカウンセリングとともに少ないリスクで最適な結果を提案するように努めております。
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